作者のコメント
 前作の応募作が駄目でも、もう一作と思い、選考にかけられている段階から自分で取材を始めた作品です。アダルトビデオに出演した女性の人権を守ろうという運動をしている人を知り、自分でアポを取って会いに行きました。編集者など付いていませんでしたから、その頃の取材は当然のことながら突撃取材でした。ずいぶん迷惑がられたり、呆れられたりしたと思います。恥ずかしい限りです。
 村野ミロ・シリーズの第二弾ですので、話は続いているのですが、トモさんという新たな登場人物を作ったことで、小説的展開としては楽になりました。ミロを複雑な気持ちにさせる同性愛者の隣人トモさんは、ミロを助けたり、突き放したり、友人でも恋人でもなく、思うようになりません。その辺の人間関係のねじれが私好みだったのでしょう。余談ですが、トモさんは女性読者を獲得したみたいで、ファンレターをいただくと「トモさんとミロの会話が好き」という内容のものが多かったです。
 そこへ乱歩賞受賞の報せがあり、受賞後の混乱も手伝って、結局、書き始めるのがずいぶんと遅れてしまいました。翌年、やっと書き上がったのですが、「ミロと矢代が寝るところを書き変えたらどうか」という意見がありました。「32歳の女性なのだから、立場というより、個人的興味の方がそれを超えるのでは」と反論しましたが、『顔に降りかかる雨』同様、女主人公であることの不自由さも感じました。私としては、『顔に降りかかる雨』よりも心のねじれの多い分、またミロの失策がある分、とても好きな作品です。
(インタビュー・構成 ミッシー鈴木)


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